今日は耐震設計について書いていきたいと思います。
日本は地震が多い国であること、耐震偽装が話題になったこと等耐震設計の一部分に注目が集まることはありますが、耐震設計ってどいうものか知っている方って結構少ないと思います。
耐震設計について知りたいという物好きな笑人向けに今回の記事を書いてみようと思います。
分かりにくいというか少し難しめの内容になると思いますが、何とかついてきてください。
出来るだけわかりやすく書けるように頑張ります!
構造設計の面から見た建物の価値とは
これは非常に難しいテーマです。
構造設計にも他の製品と同じようにグレードが存在します。
この記事ではこのグレードを説明したいと思っています。
そもそも建物の価値とは何でしょうか?
デザインの美しさ、使いやすさ、快適さ。
色々あると思います。
正直一つではないと思いますし、設計者、お客さんにとって異なって当然だと思います。
私は企業に所属して会社員として仕事をしているので、面白みはありませんが、お客さんが作ってほしい建物をいい感じに作るのが価値提供だと考えています。
ここで厄介なのは構造の価値は共通理解を得るのが難しいという点です。
そこで今回は構造のグレードを説明したいと思ったわけです。
少しは構造設計の普及に力になれればと思います。
耐震設計の言葉の意味
「耐震設計」という言葉は少し曖昧です。
この記事の中でどういう意味で使うか少しだけ説明します。
我々構造設計者は外からかかる何らかの力に対して建物の骨組みを設計しています。
代表的なのが建物自信の重さ、雪の重さ、風、そして今回取り上げる地震です。
日本の地震は強力なので地震に対して設計してしまえば建物としては成り立ってしまうものがほとんどです。
中には豪雪地域や超々高層建物などは地震以外の力が大きいこともありますが9割以上の建物は地震が一番大きい力になります。
日本では地震に対する設計=建物の構造設計といっても過言ではないのです。
無理やり分かりやすくすると「構造設計」=「耐震設計」と言えなくもありません。
地震に対してどういった設計をしたのかがそのまま建物の性能につながります。
つまりこの記事の中では「耐震設計」=「建物の性能を決める構造設計」という意味で使います。
前回日本の構造設計についても記事を書いていますので合わせて読んでいただくとより一層理解が深まると思います!
耐震設計の方法
日本の法律では耐震設計の方法は大きく2つあります。
一つが法律に従って計算する方法です。
もう一つが設計者が独自に(と言ってもガイドライン的なパターンはあります)設計をまとめてそれを審査員(ほとんどが大学の先生)に審査してもらう方法です。
一つ一つをもう少し詳しく説明しようと思います。
保有耐力計算による方法
ここで説明するのは上記でいうところの法律に従って計算する方法です。
厳密には建物規模や構造形式によって計算ルートが用意されています。
ルート1、ルート2、ルート3とほとんど使われませんが限界耐力計算という方法です。
ここでは私が一番経験しているルート3について説明したいと思います。
対象となる建物は規模で決まるのですが、企業が作るような建物はほぼすべてこの方法で計算されていると思います。
一概には言えませんが、1000m2を超えたり3階建て以上だったり駅前のビルとか工場とか学校とか病院とかいった建物は大体当てはまります。
例外として60mを超えたり免震構造、制震構造である場合は後述する方法でやる必要があるので対象外です。
ルート3の設計方法は2段階に分かれています。
許容応力度計算と保有耐力計算です。
許容応力度計算は建物自身の重さや震度5弱くらいの地震に対して建物が損傷を受けないように設計します。
許容応力度計算は設計方法が同じでどの建物でも同じなので説明は割愛します。
保有耐力計算は震度5強以上くらいの地震に対して建物が壊れないように設計します。
実際には建物の解析モデルに法律にある方法に従って地震を模擬した力を静的に建物にかけて計算をします。
この方法で構造計算をする建物は保有耐力を割りますかどうかでグレードを決めていきます。
一般的には割増なし、1.25倍に割増、1.5倍に割増の3パターンです。
正直ほとんどの建物が割増なしです。
重要と考えられている建物程割増が大きくなっていきます。
構造性能評価
上記でいうところの委員の方々に審査してもらう方法です。
構造性能評価と呼びます。
対象の建物はすでに少し触れましたが、60mを超える建物か免震構造、制震構造の建物です。
この方法と保有耐力計算で大きく異なるのは地震のかけかたです。
この方法では実際の地震を解析モデルに入力して建物モデルを実際に揺らして確認します。
一方保有耐力計算では地震を模擬した力をかけるだけで実際に揺らすことはしません。
これはどっちが良い悪いというよりは手法の違いです。
地震には震度5弱くらいのものと震度6強くらいの2つの強さのものを採用します。
これらの地震に対して建物をどういった状態にするかというのが建物の性能になります。
こちらも一般的な最低基準があります。
ただ上限はないのでどんな建物にしたいかで構造設計者がお客さんに提案して合意してもらうというのが一般的な決め方です。
まとめ
耐震設計の方法について説明しました。
日本では地震が大きいため耐震設計がほぼ建物の構造性能を決めてしまうこと、耐震設計の方法の中で保有耐力計算と構造性能評価の2通りの方法が代表的であり、それぞれグレードの決め方について説明しました。
まだまだ全体像が見えないかもしれませんが、これだけ理解できていればかなり耐震設計に対する知識はついたと思います!
さらに補強していくような記事を追加していきたいと思いますので期待していてください!
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