【構造設計者の最高峰資格】構造設計一級建築士の難易度と過去問を使った勉強法

試験 構造設計

一級建築士(別記事に飛びます)に続いてようやく構造一級建築士に合格(正確には修了)できたので、その時の経験について書きたいと思います。

受験者数の少ない試験なので情報も少なかったため、これから受験される方々にとって少しでも有益になれば嬉しいです。

試験の概要と受験資格

試験の概要

試験元は建築技術教育普及センターというところで一級建築士と同じです。

建付けとしては講習を受け、修了考査に合格すれば構造一級建築士になれるという形です。

講習は毎年9月頃、修了考査は11月に行われます。

「法適合確認」と「構造設計」に分かれていて講習を2日間の座学で受講し(対面式と録画された映像の配信式のどちらでも受講できます)、約一か月半後に行われる修了試験に2科目とも合格して、初めて合格になります。

科目合格制度もあり、合格した科目は2年間有効になります。

また、恐らくあまり知られていないと思うのですが、試験が免除になる方法があって、それが構造計算適合性判定資格者であることです。

構造計算適合性判定資格者の試験は3年に一回なのでうまくタイミングが合えば構造一級建築士より先に試験を受けることができるので、個人的にはとてもチャンスだと思っています。

受験資格

この試験は試験の難しさよりも受験資格を得ることの方が難しいと思います。

受験資格は1級建築士として登録後5年間の構造設計に関わる実務経験です。

具体的にどういった業務が実務経験になるかは公式のHP(直接PDFに飛びます)を参照してください。

最短でも1級建築士の登録に2年の実務経験が必要で、その後5年の実務経験が必要なので22歳で大学を卒業してすぐに働き始め、最短で一級建築士に登録したとしても社会人8年目になるので29歳以上でないと取得できない資格になります。

資格取得のメリット

資格の位置づけは一級建築士の中でも構造設計に特化していて、一定以上の規模の建物の構造設計は構造設計一級建築士が構造設計に関与していることが求めらます。

一定以上の規模はかなりややこしく、具体的には法第20条第1項第一号及び第二号の規模かつ一級建築士の関与が求められる建物になります。

さっぱりわからないと思います。私もわかりません。

かなり大雑把に言うと高さ13mを超えるか4階建て以上の建物のと考えていただければ良いと思いますが、正確ではないので本筋ではないのでこれ以上は国土交通省のパンフレット(PDFに飛びます)を参照ください。

正直このパンフレットを読んでもさっぱり分からないと思いますが…

つまり、一定以上の規模の建物を設計しようと思ったら必ず一人は構造設計一級建築士が必要になります。

現在登録されている構造一級建築士は約11,000人なので一級建築士が37万人程いることに比べれば貴重な資格であると言えます。

ただし、構造一級建築士が関わるような規模の案件を受けられる会社には資格を持っている人はたくさんいるので、実際は本当に必要な場面は少ないかもしれません。

構造設計一級建築士になって構造設計者としての本格的なキャリアがスタートするといった感じだと思います。

試験の難易度・特徴と受験前の前提知識

試験の難易度・特徴

試験の形式はどちらの試験も試験時間は3時間で、問題構成は大問1が選択式+その理由記述で大問2~4が設計や法規に関する記述問題になります。

過去に一度問題の形式が変わったことがありますが、試験元が発行している試験要領に問題形式が書いてあるので変更がないかくらいは確認しておいた方が良いと思います。

合格基準は明らかにされていませんが、60~70%くらいだと思います。

この試験の一番いやらしいところは各大問ごとに足切りが設けられている点でかつその基準は明示されていないことです。

例えば大問1~3が満点だったとしても大問4の最初の問題で計算ミスをして芋づる式に大問のほとんどの問題を間違えてしまったら、全体では80%程度の点数がとれていたとしても不合格になってしまいます。

小問集合であればよいですが、例えば大問が小問1の答えを使って小問2に答える、といった構成になっていると大問丸々落としてしまうリスクがあり、この試験では不合格に直結してしまいます。

ケアレスミスや計算間違いには非常に気を付けなくてはいけない試験になっています。

難易度は実務経験の内容に大きく左右されると思います。

ゼネコンや組織設計事務所である程度バリエーションのある設計経験を持っていれば既に合格する力はあると思ってよいと思います。

特定の用途や構造形式に特化した経験しかない方は少し難易度が上がるかもしれませんが、少なくとも5年の実務経験があれば素養は十分だと思いますがなじみのない分野の知識を仕入れる必要はあると思います。

私の設計経験は規模感は小規模から大規模まで経験していますが、鉄骨造の経験しかないので鉄筋コンクリート部材の部材種別の判定とか保有水平耐力の計算とかは黄色本を追いかけながらでないとできません。

幸いにも持ち込み自由なのでどこに書いてあって、大まかな流れを把握するところまで仕上げれば十分だと思います。

受験前の前提知識

私は別の記事でも書いている通り、ゼネコンの構造設計部門に所属しています。

繰り返しになりますが受験資格を得られるくらいの実務経験があれば合格する力は既に備わっていると考えてよいと思います。

この試験の題材は建築基準法に従った構造計算ができるかという点に尽きるので、特に確認申請案件の経験が豊富であるほど有利になると思います。

また、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、構造解析といったところが主な題材になることが多く、建物の規模は中規模程度なので通常の業務でカバーできると思います。

私のようにゼネコンや組織設計事務所勤務の方は木造の経験がほとんどない人が多いと思いますが、木造は壁量計算や壁倍率、偏心率の計算等出題範囲が他のものに比べて限られているので過去問で出た問題の解き方を理解していれば問題ないと思います。

こればかりは運になってしまいますが、この試験は難易度の振れ幅が大きい試験です。

稀にちょっと意表を突いたような出題もあるので、注意が必要で過去には自分が設計した建物の構造概要と伏軸図を描かせる問題や過去の地震とその被害の特徴を答えさせる問題が出たこともあり、大問を一つ落とすと足切りになってしまう受験生の立場からは変化球の問題が出ない事を祈るばかりです。

試験には俗にいう黄色本(「建築物の構造関係技術基準解説書」(2020 年版))と講習で使用するテキストの持ち込みが許可されています。

テキストに沿っての出題が基本ですが、時には載っていなかったり探すのに非常に手間がかかる問題が出たりするので、それも時の運としか言いようがありません。

具体的な勉強方法

今までに述べてきたことを踏まえて合格する可能性を高める対策は問題に合わせて自分の力をきちんと出し切れる練習をすることと足切り対策だと考えて勉強をしました。

一級建築士のように資格学校でも講座はありますが、とても高額なため私は独学で進めることにしました。

実際、この試験は独学の方がほとんどだと思います。

勉強を始める前提として受験できるほどの実務経験があれば合格するための知識は持っているというところから始めます。

後はその知識を問題に合わせてきちんと引き出せるように過去問を使って練習することです。

勉強を始める前に一手間かかってしまうのですが、この試験の過去問は試験元が過去5年間の販売をしているのみで市販はされていません。

会社に過去に受験した人がいれば過去問と回答例を可能な限りもらって方が良いです。

ただ、昨年度の過去問は恐らくないはずなので買うしかありません。

結構高額なので近くに同じように受験する人がいれば代表して1冊買ってみんなでシェアするのが良いと思います。(こんなことを勧めると販売元の方には怒られるかもしれませんが…)

過去10年分くらいあれば十分だと思います。

過去問が手に入れば後はひたすら解いて出来るように仕上げていくだけです。

5年分くらいを十分にやり込めば標準的な問題が出れば合格できる力はつくと思います。

後は足切りにならない対策ですが、まずはケアレスミスをなくすことです。

特に小問が連結するような問題の時は特に注意深く問題を解くようにしてください。

これは自分自身が気を付ける、意外に対策はありません。

次に変わった問題が出たときの対策ですがまず過去問で出た形式はつぶせるようにしておくことです。

伏軸図を描く問題が再度出る可能性は低いと思いますが、0ではないですし、全く対策していなければかなり厳しい状況になってしまうので念のため対策していた方が良いと思います。

後はテキストに一通り目を通しておくことをお勧めします。

テキストに記載していることであれば突然出題される可能性はあると思いますし、一通り見ておけばもしかしたら思い出すかもしれません。

最近の傾向として過去問と似たような計算問題というよりはその場で考えさせる問題が増えている印象を受けますが、これは対策のしようがありませんので、強いて言えば通常の業務に一生懸命取り組むことが最大の試験対策になると思います。

最後は標準的な問題が出ることを祈りつつ、諦めず自分の力を発揮するしかありません。

最後に

構造設計者にとって総まとめのような試験ですが一番の勉強は業務に熱心に取り組むことだと思います。

後は試験用にアウトプットの練習をして、足切りに引っ掛からないようにできる限りリスクを潰すくらいしかできることはないと思います。

ゼネコンの設計部に所属していることはかなりのアドバンテージだったと思います。

また一級建築士以上に合格して当たり前という見えないプレッシャーも感じましたが今まで頑張ってきた実務経験を活かして合格を勝ち取ってください。

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