【米国PE登録まであと一歩】米国PE試験の勉強方法

試験 構造設計

FE試験の記事に引き続きPE試験について私の経験を書いていきたいと思います。

日本では年間の受験者が100人にも満たない試験なので日本語の情報はとても少なく私自身も受験する時に情報集めに苦労したので少しでも受験者の方々の役に立てれば幸いです。

PEとは

PEは正式にはProfessional Engineerで、アメリカの各州が州ごとに設けているエンジニアの公的資格であり、作成した図面などにスタンプを押すことで責任者として仕事ができる資格です。

日本では技術士(まだ合格していませんが受験経験があり記事を書いています)とよく比較されますが個人的には実情はかなり異なっていると思っています。

日本の技術士は名称独占資格で技術士だからこそできる仕事はなく、あくまでも「技術士」であると名乗れる資格です。

一方でアメリカのPEはエンジニアとして責任ある立場で仕事をしようとすると必須の資格になり、業務独占資格と言って差し支えないと思います。

また試験内容は一次試験である技術士補とFE試験は共通点も多いですが、二次試験の技術士試験とPE試験は大きく異なります。

技術士試験は課題発見とその解決策を文章で説明する記述問題である一方でPE試験は工学一般問題と専門分野の問題が半々の選択式問題になります。

技術士試験は専門知識というよりは記述能力と広く浅い社会への問題意識を問われるような問題で、PE試験は工学に関する専門知識を問う問題で構成されています。

どっちが良い悪いではなく両者は似たものとして比較されがちですが個人的にはかなり異なる試験であると認識しているということです。

また専門領域によっても捉え方は大きく異なると思います。

私は建物の構造設計が専門なのでエンジニアとして成果物に責任を持つという意味ではPE資格は技術士というよりは構造設計一級建築士施工管理技士それぞれ別の記事に飛びますに近い資格です。

余談ですが、一級建築士はそれに対応する資格が米国にも存在しますし建築家とエンジニアは日本以外ではかなり明確に区別されていて、大学の学部や資格も異なります。

PE試験の概要

試験の大元はNCEESで日本での試験申し込み等は日本PE・FE試験協議会(JPEC)に対して行います。

アメリカの試験は長時間でタフなものが多いです。

PE試験も例外ではなくトータル9時間で全80問です。

アメリカのユニークなところで試験時間にチュートリアルの10分と休憩時間の50分も含まれていて、実質の試験時間は8時間です。

残念ながら休憩時間を削って試験時間に充てることはできません。

もちろん問題文は全て英語です。

試験形式はCBT形式がほとんどで筆記方式の分野もCBT方式への移行を予定しています。

問題は基本的には4つの選択肢から1つを選択する方式ですが、数問は数字を入力する形式やグラフを使った問題、並べ替える問題が出ます。

単純計算で一問当たり6分なのでFE試験の倍の時間がありますが、問題の難易度はFE試験より当然上がります。

と言っても時間が2倍かかる訳ではないのでFE試験よりは時間にゆとりがある試験と言えます。

問題の構成は前半40問がFE試験に近い工学全般の問題で、後半40問が専門分野に特化した問題です。

試験範囲はFE試験と重複するところも多いですが全く同じという訳ではないので試験範囲をきちんと確認しておきましょう。

分野は16分野に分かれていて分野によっては更に細分化されています。

私が受験したのはCivilの中のStructuralという分野です。

合格点は公表されていませんが70%以上で合格と言われています。

合格しても結果が通知されるのみで残念ながら合格点や自分の点数は分かりません。

PE試験の受験資格

基本的にはFE試験と同じで「工学(Engineering)」が入った学位を持っていれば受験可能ですがFE試験に合格している必要があります。

合格後にPE登録をするにあたってはもっと必要な条件が増えますが試験を受けるだけであれば学歴とFE合格だけで十分です。

詳細はFE試験の記事を参照してください。

重ねて注意していただきたいのはPE試験合格とPEとしての仕事ができるということは同じではありません。

PE試験合格後に州にPEとして登録されて初めてPEとして仕事ができます。

また登録に求められる条件も州ごとに異なりますのでその点についても注意が必要です。

PE試験の特徴

PE試験は試験中の資料閲覧と関数電卓の使用が許可されています。

関数電卓は指定の型番でなくてはいけないのでNCEESのCalculator policy(リンク先の右下にあります)を確認ください。

閲覧できる資料は受験分野によって異なります。

私が受験した分野ではHandbook(NCEESのアカウント作成後ダウンロード可能)と各設計コードが閲覧可能でした。

Handbookは受験する分野ごとに異なるので注意してください。

また閲覧可能な資料や出題範囲と出題数は各分野ごとにNCEESから公表されているので絶対に確認しておいてください。

PE試験はFE試験と比較してさらに専門分野に特化した問題が出題されます。

ですが、前半の40問は個人的にはFE試験とそれほど難易度の差を感じませんでした。

後半40問はかなり実務的で私が受験した分野だと部材の耐力を求めたり設計用の荷重を求めたりまさに実務で行っていることが問われました。

この試験でも同じく単位にはかなり戸惑うと思います。

日本の実務に慣れていれば慣れているほどギャップが大きいと思うので受験するのであれば早い方が良いと思います。

戦略と勉強法

FE試験よりは勉強しやすいと思います。

私が注目するFE試験との違いは時間、問題構成、合格点です。

1問当たりに掛けられる時間が約2倍になります。

特定の問題で時間を無駄にしなければ時間が足りなくて問題が解ききれないという事態にはならないと思います。

ですが本番の試験では前半で作った時間の余裕を解けるかどうか分からない問題で吐き出してしまい、後半で時間があれば解けそうな問題を2,3問十分に考える前に回答することになってしまいました。

もし不合格だったらかなり悔いが残ったと思いますので注意してください。

問題の傾向として前半より後半の方が時間がかかる問題が増えるので後半に時間を残しておいた方が良いと思います。

問題構成は前半40問、休憩を挟んで後半40問で、私はアメリカで受験したので日本ではどうか分かりませんが、80問で8時間使えた(前半4時間+後半4時間ではない)ので例えば前半が3時間30分で解けたら後半に4時間30分使えました。

時間配分も事前に想定して試験に臨んだ方が良いです。

PE試験はFE試験に比べて問題数が減って合格基準が上がっているので一問一問の重みが増えています。

出題範囲は前半の40問はHandbookから出題されるのに対して後半40問は参考資料を基に出題されることが多いです。

私の場合は後半の問題で例えば部材の耐力計算をする際に日本の基準であれば式そのものやどの本のどのあたりに書いてあるかを実務を通じてほとんど覚えていたのですがアメリカの基準では本を見ながらでないとできないですし、何冊もある参考図書の内どの本のどこに書いてあるかも分からない状態でその上中身は全部英語で書いてあるので探す→当てはめる→計算するというプロセスにかなり時間がかかっていました。

また普段馴染みのない木造や石造やPC等も出題されるので後半の問題で得点を伸ばすのは難しいと考えていました。

一方で前半の問題はHandbookから出ますし、FE試験でも一通りやっていてさらに範囲が絞られていて時間もあるので前半の問題で点数を伸ばそうと考えました。

こういった状況だったので戦略としては前半で80%、後半で60%を想定して取り組みました。

前半の問題は得意な力学の問題やパターンが比較的限られている交通工学の問題等で点と時間を稼ぎ、馴染みのない流体力学や土質工学の解けそうな問題に時間をかける作戦にしました。

後半の問題は馴染みのない木や石の問題は知っている問題が出れば取りに行って、式から探さないといけないような問題は無視して普段から馴染みのある荷重や鉄骨、RCの分野に時間をかける作戦にしました。

具体的な勉強法

状況と基本的なやり方はFE試験とほとんど変わりません。

過去問がないので試験元であるNCEESの問題集(NCEESのアカウント作成後購入可能)を買い、(FEより問題が少ないのに高かった記憶があります)ひたすら仕上げます。

PE試験はFE試験の受験料の2倍だったので絶対に1回で終わらせたいという気持ちがあり、また午前試験を重視していたので午前+午後の問題集1冊と午前のみの問題集1冊を追加で購入してそちらも答えを覚えるぐらいまで仕上げました。

相変わらず参考書としてHandbookはNCEESのHPからダウンロードするのですが、今回は参考図書も必要になります。

幸運にもお世話になっている会社に参考書が全て揃っていたのでそちらを使わせてもらいました。

仮に全て購入となると恐らく10万円では足りないくらいなのでとても助かりました。

実際の試験ではHandbookと参考図書が全てデータで用意されているので実際に自分で持っている必要はありません。

筆記方式であれば書籍を持ち込む必要があったため、CBT方式さまさまです。

勉強方法としては準備した問題集を全て答えを覚えるくらいやり込んで、Handbookに数回目を通すという方法を取りました。

PE試験はFE試験に比べてかなり実務寄りなので特に後半の問題対策が実務を通じて出来てしまっているような方はほとんど勉強せずとも合格すると思います。

私も国こそ違えど実務を通じて知識があったので前半問題の勉強と午後問題はどの本のどこに何が書いているかを覚える程度の勉強で合格することができました。

恐らくPE試験は試験のために勉強するというよりは合格できるだけの知識を持っているかどうか確かめる試験くらいの立ち位置だと思います。

と言っても最初はどこに何が書いてあるか全く分からないし英語も分からないし式も複雑だしかなり心が折れましたが何とか食らいついて山を越えれば出来るようになってきます。

合格できたので良かったですが、もし落ちていたらこれ以上の勉強の方法は思いついていなかったので結果発表まではかなりヒヤヒヤしていました。

実際の試験と勉強時のギャップ

FE試験も同様ですが実際の試験と試験元が出している問題集でさえ結構ギャップがありました。

問題集と同じような問題は体感1/3くらいで他は初めて見るような問題が多いです。

そういった問題に対して知識と本を使いながら解いていくというのが試験で求められていることなのだと思いますが。

難易度は問題集より若干難しいかなというくらいで特に違いを感じたのは問題集より計算量が少なかった点です。

もちろんCBTなので受ける回による変動はあると思いますが、計算して何か数値を出すというよりは傾向や性質等を問うような定性的な問題が多かった印象です。

一番の対策は受験分野と参考図書に精通することなのだと思いますが時間がかかりますし、日本で仕事をしていれば普段使うような知識ではないので中々難しいと思います。

一方で予定していた時間配分は失敗しました。

特に前半で半分以上時間を使ってしまい、後半何問か時間があれば、という問題が出てきてしまいました。

本番は中々思うようにいかないので時間配分を守れるように何かルールを作って取り組むのが良いと思います。

やり終えた手応えとしても悩む問題が多く、非常に怪しいものでした。

使用した問題集等

NCEES:試験元が出している問題集をやり込んだ。

 Path to PE Services:午前中試験対策として「Civil PE Practice Exam: CBT Breadth Volume B」をUSAアマゾンで購入してやり込みました。NCEESの問題集よりやや難しかった。($25程)

School of PE:リンク先の「PE Civil: Structural Practice Exam & Solutions」をやり込んだ。午前問題は一番易しかったが午後問題はNCEESの問題集より難しかった。(送料込みで$50程)

感想としては高額な割にそこまで役に立たなかったなという印象です。

難易度は多少ばらつきがあるものの実際の試験と同じか少し易しいという印象です。

またNCEESの問題集を参考にしすぎていて市販の問題集も似たような問題が多いです。

それしか試験元の情報がないのは分かりますがNCEESの問題集だけでは不足していると思って他の問題集に手を出しているのだから違うタイプの問題を用意してほしいものです。

同じような問題しかないのだったらわざわざ買わないので。

結果的にSchool of PEの問題集はやらなくても良かったかなと思いますが参考図書の色んなページを読むきっかけにはなりました。

なくても合格できたと言い切れるほど役に立たなかったわけではないのでNCEESのものだけでは不安な方は買って良いと思います。

YoutubeやGoogleで英語ベースでも情報を探してみましたが日本のように実際に経験談や難易度や勉強のやり方を解説しているページはほとんど見当たりませんでした。

Youtubeは数人は参考書のレビューやTips(コツ)を話している人がいらっしゃって、実際に役に立ったとは思いますが全て英語なので理解するのにも苦労しました。

最後に

PE試験も日本と比べて情報や教材が不足する中での勉強を強いられます。

これを言うと元も子もないですが日本で仕事をする限りはほとんど不要な資格なのでモチベーションの維持も難しいと思います。

そんな逆境の中同じように受験を決めた方々の助けになれれば幸いです。

私も何とかPE登録まで終わらせられるように頑張りたいと思います。

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