建設業経理士1級の試験のうち「原価計算」、「財務分析」に合格したのでその時の経験を書いていきたいと思います。
「財務諸表」はまだ合格できていませんが、引き続き挑戦する予定です。
3科目合格してから書いてもよいのですが、記憶が鮮明なうちに、ということと1度の受験で三科目全てに合格する人の割合は少ないことから段階的に合格した経験も役に立つと思い、今の段階で記事を書いています。
建設業経理士1級の試験概要と取得のメリット
試験概要
試験は建設業振興基金が行っていて、試験区分は建設業経理士1~4級に分かれています。
2~4級が1つの試験だけ受けるのに対して1級の試験科目は冒頭でも少し触れましたが「財務諸表」、「原価計算」、「財務分析」の3科目があり、すべてに合格して建設業経理士1級になることができます。
科目合格制度があり、一度合格した科目は5年間有効です。
試験は年に2回9月と3月に行われています。
試験時間は各科目90分で70%以上の得点率で合格になります。
公表されていませんが、難易度が高かった回は70%に達していなくても合格することがあるようですが、実際に合格点が何点で自分は何点だったかは残念ながら分かりません。
受験資格はなく、誰でも受けることができます。
資格取得のメリット
取得した個人に対して業務独占等の直接的なメリットはなく、間接的なメリットが見込める資格になります。
もちろん試験対策を通じて特に建設業に関する会計知識が身につく、というメリットはありますが、残念ながら建設業経理士1級を持っていないとできない業務はありません。
この資格のユニークなところは有資格者を従業員として雇う企業側に公共工事の入札可否を判断するための「経営事項審査」の加点対象(1級は1点、2級は0.5点)になるというメリットがあるため、資格手当や転職時に評価してもらえる等の間接的なメリットがある可能性があります。
受験時の前提知識と試験問題の特徴と戦略
受験時の前提知識
戦略を立てる上で前提条件となる私の状態は日商簿記2級とFP2級を6年ほど前に取得していて、建設業に従事してはいるものの経理の実務経験は0。
残された勉強期間は1か月半ほど、という状態でした。
受験を考えている方で簿記等の前提知識が全くない方はいきなり1級はお勧めしません。
もちろん受験できますし、合格もできると思いますが、モチベーションの維持が難しいと思います。
勉強期間は長くなることが予想されますし、合格するまでは勉強に対するご褒美のようなものが全くない状態になるのでどうせ勉強するのであれば建設業経理士2級や簿記の3級、2級等を取得しながら勉強した方が成功する確率は高くなると思いますし、万が一途中で諦めることになってもそれらの資格は残ります。
試験全体の傾向
この試験の大きな特徴は知識を問う記述式もしくは選択式の問題と計算させる問題で構成されている点です。
この割合は科目によって異なり、知識問題の割合が多い順番に並べると「財務諸表」→「原価計算」→「財務分析」となり、「財務諸表」は約半分が知識問題です。
各科目に共通している点は第一問が知識を問う記述式問題になっている点で、この問題がかなり厄介です。
記述量が多く(100~300文字くらいの問題が2問)、出題範囲が広いため高得点を取るにはかなり難しい問題になっています。
俗っぽく言うとかなりコスパの悪い問題と言えます。
第一問は配点が20点となっていて、極論を言えば第一問は捨てて残りの80点満点で70点を取る、という戦略も考えられます。
詳しくは後述していきますが、この戦略はあまりお勧めしませんし、うまくいくとしても「財務分析」だけだと思います。
試験全体の特徴として問題構成は基本的に固定されていて、中でも計算問題は解き方がパターン化されています。
計算問題は過去問で対応できる問題がほとんどなのですが、近年の傾向として特に「原価計算」では過去問での出題がなく「建設業会計概説」という本の問題が出されることがあり、一気に対策しなくてはいけない範囲が増えてしまいました。
またこの試験は問題の相性にかなり左右される試験です。
特に第一問で自分が知っている分野が出るかどうか、毎年変わる計算問題で自分の知っているパターンが出るかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
そういった相性を跳ね返してどの回でも合格できる力を付けようと思ったらこれから書く勉強法の3倍くらいは勉強しないといけないと思います。
こういった全体の傾向を踏まえながら各科目ごとに見ていきたいと思います。
「財務諸表」
財務諸表の大問構成は第一問が用語や計算の方式などについて文章で説明する問題、第二、三問が選択式の文章の空欄補充問題と正誤問題、第四問が複数あるパターンから出題される計算問題、第五問が小問に回答しながら精算表を作成していく問題です。
個人的な問題の難易度は4→5→3→2→1です。
特に財務諸表は知識問題が占める割合が大きく、またその範囲が広いです。
第一問に手も足も出ない可能性が一番高い科目で、かつだ第二,三問の知識問題は0点にはならないものの満点は難しいです。
以上を踏まえて戦略としては第四、五問はほぼ満点を取り、第二、三問は6割、第一問は4割ほど取るという戦略で挑みました。
本番では精算表で数字が合わず、完成させられませんでしたし、第一問は私の知識ではどうしようもない問題だったので合格は難しい回に当たったと思います。
「原価計算」
原価計算は近年一番難しい(合格率が低い)科目のようです。
大問構成は第一問が同じく用語等に対して文章で説明する問題で、第二問は選択式の空欄補充問題、第三、四問が複数あるパターンの計算問題、第五問が工事原価計算をさせる問題です。
「財務諸表」に比べて計算問題の比率が高く、また知識問題の難易度(出題範囲)が低く、点数は取りやすいと思いますが、少し前述しましたが計算問題で過去問ではなく「概説」から出題された場合、過去問の対策しかしていなかったら恐らくその場では解けません。
私の場合は「概説」まで手を出す時間もやる気もなかったので計算問題は過去問のパターンが出たら満点を取れるところまで仕上げて、第三~五問でほぼ満点を取り、第二問で5割、第一問は4割くらいの目論見で、うまくいけば80%、知らないパターンの計算問題が出たらほぼ不合格が確定するような戦略をとりました。
結果的に過去問で対応できる計算問題だったので無事に合格することができました。
「財務分析」
財務分析は3科目の中で最も短時間で合格できる科目と言われています。
その理由は財務分析に使う公式を100%暗記すればそれを駆使すれば解ける問題だけでほぼ合格点を取ることができるからです。
大問構成は第一問が同じく用語などを文章で説明する問題、第二問は選択式の空欄補充問題、第三問が貸借対照表と損益計算書を完成させる問題、第四問が複数パターンの計算問題、第五問が各指標の計算問題と選択式の空欄補充問題です。
第三問と第五問は公式に入れて計算するだけなので計算部分はほぼ満点、第四問は基本的には過去問の計算パターンで計算するだけなのでこちらもほぼ満点、第二問と第五問の知識問題は6割、第一問は4割取る戦略でした。
財務分析は知識問題に出る範囲が狭いので第二問~第五問だけで70%以上取れる確率が一番高く、第一問も部分点を取れる確率が最も高いです。
私が受けた回は第三問がちょっと捻られていましたが、想定していた作戦で対応できたので無事に合格することができました。
具体的な勉強法
私は参考書兼問題集になっている本を使って勉強しました。
計算問題は過去10回分を目安にどのパターンがでても解けるところまで繰り返し問題を解きました。
大問単位では固定されている問題も小問単位では試験回によって若干異なりますしたまに新しいパターンが出たりもしますが、こちらも過去問で見たパターンは全て解けるようになるまで練習しました。
知識問題は参考書の数回通読と過去10回分の過去問のキーワードになる部分は覚えて第一問で部分点を稼げるようになることを目標に勉強しました。
時間がなかったので概説は全く触れていません。
財務分析は試験に出題される公式が試験元のHPに載っているのでほぼ全て覚えました。
もちろん覚えるだけでは不十分で覚えた上で特に第三問と第五問を解くときにきちんと使えるようになるまで練習しました。
基本的にはやったことはこれだけで、過去問で出た計算問題は全て解けるように準備して知識問題でも過去問の範囲はカバーしつつ、参考書を読んでちょっとでも部分点を取れればラッキーという感じでした。
また、勉強する順番もよく話題になりますが、通説通り「財務諸表」→「原価計算」→「財務分析」が一番効率的だと思います。
あくまでも3科目同時合格を目指す場合なので何か狙いを定める場合は狙う科目を優先的に行った方が良いと思います。
有名な参考書が3つほどありますが、その中でも私が使用したものを載せておきます。
それほど毎年傾向は変わらないので私はメルカリ等で数年くらい古いものを安く集めました。
まとめ
建設業経理士1級の試験について私の経験をまとめましたが、私は実務経験も体系的な知識も乏しいのでかなり運任せな戦略を選択しました。
基本的には過去問で出た計算問題のパターンと財務分析の公式は覚えきって、知識問題で1点でも取れるように過去問と参考書を覚えたり読んだりして、後は相性が良い問題であることを祈りました。
結果的に2科目は合格できたので、相性の良い問題が出たときに合格できるところまでは持って行けたと思います。
最短距離で合格を目指す人には参考になるのではないかと思います。
私も残り1科目の合格を目指して引き続き勉強していきます。
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