【米国PE登録への登竜門】FE試験の勉強法

試験 構造設計

今回は私が米国で受けたFE試験の経験について書きたいと思います。

日本ではほとんどなじみのない試験だと思いますが、その分日本語での経験談が中々見つけられず情報収集時にとても苦労したので受験を考えている日本人の方に役立てば嬉しいです。

PE試験の記事はこちらです。

FEとは

試験の大元は米国のNECCSという団体で、日本での試験は日本PE・FE試験協議会(JPEC)が行っています。

簡単に概要を説明しますが、日本PE・FE試験協議会(JPEC)のHPの方が充実しているのでより詳細に知りたい方はそちらをご覧ください。

FE試験はThe Fundamental of Engineering Examの略称でその先にあるPE(Professional Engineer)になるための一次試験という意味合いが強いです。

FE試験に合格すればEIT(Engineering in Training)に登録できますが、日本から受験するのであれば気にする必要はありません。

米国に住んでいてこれから米国でキャリアを積もうと考えている方はEITも一考の価値があると思いますが、私自身はそこを通過していないのでこれ以上の情報は提供できません。

恐らくこの試験を受験する方の目的はPE資格の取得だと思いますので、その一次試験という立場からFE試験について書いていきます。

FE試験の概要

FE試験はCBT方式の試験で全部で6時間の試験になります。

日本の資格試験と異なり、6時間の中にガイダンス15分と休憩25分が含まれていて、実質の試験時間は5時間20分です。

問題は全部で110問あり、ほぼ全て選択式になっていて、数問は複数選んだり数値を記述したり並べ替えたりする問題があります。

合格点は公表されていませんがおおよそ60%以上で合格と言われているようです。

出題される問題の範囲と構成は受験する分野によりますが、内容は工学の基礎的な知識です。

受験分野は全部で7つあり、「Chemical」、「Civil」、「Electrical&Computer」、「Environmental」、「Industrial&Systems」、「Mechanical」、「Other Disciplines(その他)」です。

どの分野でも合格すれば次のPE試験に進めます。

日本の学部の感覚とは異なるかもしれませんが、それぞれ問題の出題構成が書いてあるので自分が一番得意そうなものを選んで良いと思いますが、大学で勉強した分野か今仕事にしている分野にするのが一番良いと思います。

またこの試験は持ち込み、というか公式のHandbook(NCEESのアカウント作成後ダウンロードできます)が試験中に閲覧できて、検索もできます。

PC画面の半分が問題で半分はHandbookという状態で試験を進めていきます。

また関数電卓の持ち込みが認められていますが、型番が指定されています。

こちらは公式のCalculator policy(リンク先の右下にあります)を参照ください。

これは余談ですが、私が米国に来て買った関数電卓がたまたま持ち込み可能な型番だったことからこの試験を受けるしかないと思いました笑

FE試験の受験資格

FE試験は「工学」とついている学部の学士、修士、博士を持っていれば受験できます。(卒業見込みの4年生も可)

正確には学位を英訳したときに「Engineering」が入っていればOKです。

実務経験は必要ありません。

ただし、最終的にPEとして登録する時には実務経験が必要(州によって年数や条件は異なる)であり、学歴要件として条件を満たした学位が必要になります。

条件を満たした学位というのはEAC/ABET認証が与えられているか所定の機関から同等であると認められている必要があります。

今のところ日本の大学でEAC/ABET認証を受けている大学はないので日本の大学を卒業した方は別に認証が必要になりますが、多くの方は試験の大元であるNCEESの認証を受けることになると思います。

少し話がそれましたが学歴要件の認証云々という話はPE登録の時の話で、FE試験の受験には必要ありません。

ただ、恐らくFE試験を受ける方のほとんどが最終的にPE登録を目指していると思いますのでPE登録ができる条件を満たしていることを確認してから受験することをお勧めします。

私の経験と今の状態

私は日本の大学を卒業し、日本で働いたのち、研修という形で米国に少しだけ行けることになりました。

受け入れてもらった会社ではPE資格を持っていて当然という状態だったので、そこで初めて資格について知り、取得すれば留学の一つの成果にもなるかなという邪な気持ちもありつつ、受験を決めました。

この時初めて日本で受験できることを知ったくらいこの試験のことを何も知りませんでした。

そこから試験と資格の制度について調べて、PE登録までできそうな状態だと判断して、非常に高額な受験料(FE:$175、PE:$345)米国でFEとPEの試験を受けて合格した状態です。

受験科目はFEがCivilでPEがCivil Structuralです。

これからPE登録が出来るように必要なものを揃えていこうと思っている状態です。

具体的に試験攻略に向けて書いていきたいと思います。

FE試験の特徴と苦労する点

正直に言ってこの試験は効率的に勉強するのが難しいです。

その理由は教材が充実しておらずどんな問題が出るか分からないからです。

日本の教材の豊富さとその安さに今更感動するほどこの試験に対する効率的な勉強方法を確立するのは難しいです。

私が思うこの試験の特徴はとにかく時間との戦いになるということです。

110問を5時間20分なので単純計算で2分54秒です。

試験時間が長い割に時間が足りません。

また試験は全て英語なのでそこそこ英語が読めないと問題の意味が分かりません。

幸いにも私は英語の勉強が必要なほどではありませんでしたが、当然日本語よりは問題を理解するのに時間がかかりますし、本番でも数問は英語で正確に意味が分かれば解けるのに、と思った問題はありました。

その分野独特の専門用語は少し覚える必要があると思いますが、それは演習問題を通じて覚えていけばよいと思います。

もう一つ苦労するのが単位です。

日本では主にSI単位系が使われますが、FE試験はほぼinchやpoundです。

また回答に当たって単位変換を求めてくる問題が結構あり、Handbookに単位の変換は載っているものの、馴染みがないと時間がかかるばかりか混乱して間違えることが良くあります。

また単位を読み間違えた時の答えが選択肢に紛れている引っ掛け問題もあります。

とにかく馴染みがないので、最初はかなり苦労すると思います。

特にエンジニアだとおおよそ妥当かどうという範囲があると思うのですが、単位が変わるとその感覚を失ってしまいます。

FE試験の問題はPE試験と比較して広くて浅いです。

ただ日本では馴染みのない分野も含まれていて、私はCivilで受験したのですが、技術者倫理や統計・工学経済、材料、流体力学、水理学、環境工学、交通工学等は大学で学んでおらず苦労しました。

これらの特徴からこの試験の心構えとしてはとにかく時間がないので得意な分野で時間と得点を稼ぎ、時間をかけたら分かりそう(Handbookで見つけられそう)な問題に時間をかけて、時間をかけても分からなさそうな問題はすぐに見切りをつける、です。

試験で効率的に点を稼ぐにはHandbookのここを見れば解けるという問題を増やすことです。

幸いにも公式を暗記する必要はなく、どこに書いてあるかさえ分かれば問題は解ける一方で、全ての問題でじっくり答えを探せるような時間設定の試験ではないので自分の専門分野で時間を稼ぎながら簡単な問題を拾うのが良いと思います。

特徴として試験の間に休憩をとることができます。

恐らく日本だと試験が前半後半に強制的に分かれていて休憩もきっちり管理されると想像されますが、受験生の主体性に任せるところがアメリカらしいところです。

自由な反面孤独な戦いになります。

休憩の最大時間が決まっているだけで取らないこともできますが、長時間なので一度リフレッシュする意味でも取った方が良いと思います。

試験が休憩の前半と後半に分かれていて、休憩を取ると前半部分の回答はできなくなります。

問題の前半と後半は最初から決まっているので自分で決めることはできません。

FE試験の勉強法

そもそもこの試験では過去問も(恐らく)公表されておらず、(私が見つけられていないだけかもしれませんが)どんな問題が出るか分かりません。

問題集もあるにはありますがどれが良いのかも分からないし、資格学校みたいなものも非常に高額で勉強するにも何から始めたら良いのか分からない状態からなので情報収集から始めました。

そんな状況でもこれは絶対に買った方が良いというのが一つだけあり、NCEESが出している問題集(NCEESでアカウントを作らないと購入できません。もしくはアメリカのアマゾンでも買えますが送付先が日本だと高額な送料がかかります。)です。

試験と同じ形式の110問の構成で確か$30くらいで、データか紙が選べますが、日本だと書籍以上の送料がとられるはずなのでデータで良いと思います。

結果的には私はこれ一冊だけで合格しました。

これ一冊で完璧に仕上がったというよりは他のものが分からなさ過ぎて不合格覚悟で飛び込んだ感じです。

ただ、公式の問題集とはいえ本番に比べて難易度は低く、解説は分かりにくく不親切で、料金も高いという日本だと到底売れないようなレベルです。

HPで正誤表がダウンロードできますが、間違えている箇所も何か所もあるようなクオリティです。

言いたいことはたくさんありますが試験元の問題集なのでこれ以上の教材はありません。

参考書は言うまでもなく公式のHandbookです。

ほぼ全ての問題を解くための情報はHandbookに載っています。

合格までに必要な勉強量はこれまでの個人のキャリアによってかなり左右されます。

他の方の体験談を読んでいると大学を卒業してから時間が経っているほど不利と書いていることが多いですが、私はそれより実務経験をある程度積んでいる方が有利だと感じています。

それは私が大学時代に熱心に勉強していなかったことの裏返しでもありますが、専門分野は学生時代より今の方が確実に知識がありますし、そもそも学生時代に勉強していた分野と試験範囲が被っていないというのもあると思います。

一つ一つの問題自体はそんなに難しくないので受かる人はほとんど勉強しないでも合格できると思います。

私も自分の専門分野の問題しか出ないのであれば勉強しなくても60%は取れたと思いますが、試験の半分以上はほとんど知らない分野なのでHandbookを見ながらでも解けたり解けなかったり+とても時間がかかる、という状態だったのでHandbookを参照する訓練が必要でした。

倫理や統計等、分野によってはほぼ解けるようになる分野もありましたが交通工学や流体力学等はダメでした。

本来は体系的な勉強が必要なほど範囲が広く奥も深いので、勉強したというよりは簡単な問題を見極めて短時間で使うべき式をHandbookで見つけられるようにする練習をした、というのが一番近い表現だと思います。

正直に言って合格した今でも何を計算していたのかよく分かりませんし、どんな意味や目的があって計算しているかも分からないが、とりあえず与えられた条件の数字を式に入れて計算したら答えが分かります、という問題が山ほどあります。

個人的にはその分野のプロになるわけではないので、それで良いのではないかと思っています。

という訳で私は公式の問題集を答えを覚えるくらい繰り返してHandbookのどこを見たら書いてあるかすぐにわかる状態までもっていきました。

これは結果的に分かったことですが、実際の試験は公式の問題集をやっていれば解ける、というものではありませんでした。

明らかに公式問題集の方が問題は簡単だし、見たことないような問題も実際の試験ではたくさん出ました。

それでも解ける問題はあるのですぐに解ける問題をやりつつ、解けそうな問題とHandbook片手に格闘するという感じです。

また本番では見たことがない問題は必ず出るので、Handbook全体に数回は目を通していた方が良いと思います。

FEのHandbookは全分野共通なので自分が受験する分野では使わない箇所もあります。

だいたいどのあたりに何が書いてあるかぼんやりでも頭に入れておくと、出題分野で大まかな場所は絞れるので検索が上手くいかなかったときに総当たりで探すときに有効です。

本番でのコツと注意点

本番のコツは検索機能を使って如何に早く正確にHandbookの該当箇所を見つけるかという点と問題文の与えられ方と選択肢をヒントにするという点です。

Handbookには膨大な量の式があり、どの式を使うのが正解か判断するのが難しいので、有効なのは該当箇所が少なく正しい箇所がヒットしそうな検索ワードを見つけることです。

固有名詞や○○係数等は大きなヒントになります。

また問題集を解くときにもどのワードで検索すると一番早く見つけられるかを覚えていった方が良いです。

また分野によってHandbookの記述量が違うので記述量が少ない分野は探しやすく、多い分野は探しにくくなるので問題の取捨選択をするときの判断材料にもなります。

FE試験では必要ない情報や数字はほとんど与えられません。

たまに使わない数字が与えられることがありますが、使う可能性の方が高いので使う前提で、与えられた条件を使い切るという観点から公式等を探すのも有効です。

また選択肢はヒントの塊です。

間違い選択肢は恐らく、出題側が想定した間違いパターンに沿って作られていると思われるのでそれを見抜ければ自信をもって正解を選べると思います。

また選択肢の数字同士が離れていれば正確に計算しなくても正解が選べるので時間の省略にもなります。

注意点はコツの裏返しにもなりますが、一番は単位や割り増しなどの条件の読み落としに気を付けることです。

意図的に色々な単位で条件が与えられるので単位の読み間違い、変換間違い、変換のし忘れには注意が必要です。

たまに余裕をどれだけ見る、とかの条件が与えられる場合があるのでそこも見落としに注意が必要です。

若干邪道ですが選択式ならではの切り口からも正解に近づけるよう工夫してみてください。

一番の注意点は時間配分です。

時間がないので分からない問題に固執しないようにしましょう。

試験が前半後半に分かれているので全体のマネジメントはできませんが時間切れで出来る問題に手を付けられなかった、は一番もったいないです。

特に前半は時間がたくさんあるので時間をかけがちですがきちんと時間配分を考えましょう。

試験問題はHandbookの前から後ろに向かって問題が並んでいるのでだいたいどのあたりが自分の得意分野で苦手分野か事前に分かるはずなので第〇問まででどれだけ時間をかけるか等目安を決めておくと本番で慌てずに済むと思います。

参考図書と資格学校

NCEES:試験の大元です。問題集を買ってHandbookをダウンロードしてください。

日本PE・FE試験協議会:日本での試験を取り仕切っている団体です。日本での受験申込もここからです。

日本プロフェッショナルエンジニア協会(JSPE):日本でのPEや受験者をサポートする団体です。登録時の方が有用な情報は多いかもしれません

PPI:恐らく最大手の資格学校です。問題集も出しています。

School of PE:資格学校です。こちらも結構有名だと思います。

最後に

PE試験受験時の経験を書いていきましたが、日本の試験とは違ってかなりとっつきにくい試験です。

思うように勉強を進めるのが難しいかもしれませんが、個人的にはエンジニアとしてきちんと大学で勉強したか実務にきちんと取り組んでいればこの試験に合格する力は自然と身に着くと思います。

戸惑う点も多いと思いますが問題集と参考書を使いながら試験に合わせてある程度練習を積めば突破できると思いますので頑張ってください。

日本語での情報がとても少なく、受験者自体も非常に少ないですが、受験を決めた方の役に立てれば幸いです。

PE試験の記事はこちらです。

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