私は工事監理の経験を基に1級建築施工管理技士に合格しました。
自分が勉強する時に工事監理の立場からの経験をほとんど見つけることができなかったので自分で書いてみようと思います。
その中でもゼネコンの構造設計者の視点から勉強の方法や特に経験記述の作り方を書いていきたいと思います。
試験の概要・受験資格
試験の概要
1級建築施工管理技士試験は建設業振興基金というところが行っています。
試験は第一次検定と第二次検定に分かれていて、第一次検定は選択式の試験で第二次検定は記述式の試験になります。
それぞれ年に一回の開催で第一次試験は毎年6月、第二次試験は10月に実施されます。
私は受験当時に一級建築士を持っており、第一次検定は免除することができたため経験がありません。
第一次試験の概要だけ説明すると、試験は午前2時間30分、午後2時間に分かれており、合計60問のうち60%以上かつ施工管理法の問題6問中4問以上の正解で合格となります。
二次検定は3時間の試験で大問6題に対して60%以上の得点率で合格になります。
受験資格
受験資格は結構複雑なので詳細は公式HP(PDFが開きます)を参照ください。
代表的なルートを紹介すると、大学、専門学校を卒業し、かつ指定学科を卒業している場合は3年以上の実務経験、指定学科以外の場合は4年6か月以上の実務経験があれば受験することができます。
工事監理者の場合は工事監理が実務経験になります。
資格取得のメリット
1級建築施工管理技士は業務独占資格で一件の請負金額が3,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の工事の専任の監理技術者になることができます。
上記の工事には専任の監理技術者の設置が義務付けられているので一定以上の規模の工事を請け負うには必ず1級建築施工管理技士が必要になります。
近年、この要件が緩和されたりもしていますが、以前1級建築施工管理技士が必須であることは変わりないので資格取得の大きなメリットになります。
第二次試験の傾向
私は第一次検定を受けていないので第二次検定について書いていきます。
第二次検定は他の資格試験に比べてユニークな出題傾向があります。
大問構成は決まっていて、第1問が経験記述、第2問が仮設・安全、第3問が施工管理、第4問が躯体施工、第5問仕上げ工事、第6問が法規です。
面白いのがテーマと選択式、記述式のローテーションです。
細かく説明しないと内容が分からないと思いますので具体的に書いていくのですが、これから書くことはその通りになる確率は高いとは言え、あくまでも傾向なので予想通りにならない可能性があることに注意してください。
絶対に受かりたい人は傾向に外れた問題が出ても合格点を取れるだけの準備をすることをお勧めします。
また、第二次検定は配点が公表されていいない事があり、60%をどうやってとるのか、という戦術は予想配点を基に立てていく必要があります。
第1問経験記述
第1問は最も大切な問題で配点は32点と予想されていることが多いです。
配点が高いことも大切な理由なのですが、それ以上に大切な理由は第1問は足切りがあると言われているからです。
32点という配点が正しいと仮定すると第1問を丸々落としても60%以上は取れる計算になりますが、どうやらそうではないようです。
私自身、体験したわけではなく勉強する時に調べた結果、どうやら足切りがあると考えないと辻褄が合わないという記事をたくさん読んだ、ということが根拠になっているので、それに囚われすぎるよりはきちんと勉強することに集中した方が良いです。
ただ、言えることは第1問が明らかにこの資格の本質部分を問うている問題であり、配点も一番高いため最も大切な問題であるということです。
第1問は「品質管理」、「施工の合理化」、「建設副産物対策」の3テーマからおおよそ規則的に出題されています。
テーマに沿った出題に対して自身の経験を基に文章で回答するというのが第1問です。
第2問仮説・安全
第2問は「安全管理」、「仮設計画」の2テーマのどれかから出題され、記述で回答する形式です。それぞれのテーマの中でもローテーションがあり、だいたい4年周期のサイクルで回っています。
第3問施工管理
第3問は最近はほぼネットワーク工程表を題材にした問題です。近年出題されていませんがバーチャート工程表の可能性も0ではないと言われています。
第4問躯体工事・第5問仕上げ工事
第4問と第5問はセットで考えます。
その理由は交互に選択式と記述式が入れ替わるからです。
具体的にはある年に第4問が選択式、第5問が記述式であれば次の年は第4問が記述式、第5問が選択式になる可能性が非常に高いということです。
問われる中身には明らかな規則性はありません。
第6問法規
令和3年から選択式問題になっています。明らかな規則性はありません。
合格点を積み上げる戦略と勉強方法
私は傾向に沿った出題になる前提で戦略を考え、勉強しました。
絶対に今年受からないといけない、という方はもっと手を広げる必要があると思いますが、個人的には手を広げる手間に対して得点のメリットが少なすぎるという点と正直に言って、そこまで頑張れないという点からこれから述べるような戦略で勉強を進めました。
戦略を考える上での全体的な特徴として、各分野4~7割くらいは過去問に近い問題が出題されるということと各大問ごとに出題形式もしくはテーマの規則性があるという前提で考えています。
全体の戦略
まず自分の得意分野は構造設計なので躯体工事と過去問を解いた感じでは施工管理の2つです。
私が受ける年は躯体工事が選択式、仕上げ工事が記述式と予想されました。
本番のばらつきも考慮して想定配点を第1問32点、第2問12点、第3問12点、第4問16点、第5問16点、第6問12点とし、最低目標点は第1問で25点(8割)、第2問は基本的に過去問以外がでたらお手上げですが、過去問の問題のバリエーションも少ないので6点(5割)、第3問は過去問の手応えからそこそこできそうだったので9点(7割)、第4問は得意分野なので12点(8割)、第5問は苦手なので6点(4割)、第6問は過去問以外がお手上げですが、選択式なので6点(5割)で合計64点程度に設定しました。
第1問経験記述の勉強法
第1問は足切りがあると言われている点、回答をほぼ事前に準備できる点、3つのテーマに対しての準備の手間が少ない点から満点を取りに行くくらい重点的に勉強しました。
3つのテーマからどれかが出題されるので受験年に問われそうな本命のテーマはありましたが、第1問は山を張って外してしまうと現場管理の経験が乏しい私の場合はほぼ不合格が決まってしまうので、3テーマ分の回答を多少多めに準備しておき、暗記するという方法を採用しました。
一つ問題なのが準備した回答が果たしてどの程度の点数を取れるか、という点です。
たとえ準備した回答をそのまま書けてもその回答が50点の回答であれば半分しか取れません。
大切なのはほぼ100点近く取れる回答例を作ることです。
私は一冊だけ本を買って本の回答例やネットで見つけた回答例を基に自分の経験と齟齬がないように回答を作成しました。
受かったから良かったですが、本当は信頼できる人に採点してもらって回答を準備する方が絶対に良いです。
ただ私の場合は現場管理者ではなく、工事監理者の立場からなので、回答例がほとんどなく、採点してもらうにも採点者を選ぶのが大変でしたし、当然有料であることから、回答は自作しました。文章も構造の工事監理者の立場から提案して採用される、という形の回答にし、内容も構造設計者から提案して妥当なものにしました。
ネタはかぶってもよいので躯体関連で過去問の問われ方に対応できる回答を準備しました。
私が注意したことは問われたことにだけ聞かれた通りに答えるという点と個性的というよりは無難でケチがつけにくい内容にするという点です。
構造設計者は現場管理者に比べて当然経験が乏しく、質で勝負しても勝てないので無難な回答で乗り切る作戦にしました。
回答が準備できたら後はひたすら覚えるだけです。
第2問仮説・安全の勉強法
第2問は私にとってなじみがほとんどなく、ローテーションも明確だったので受験年に本命のテーマの過去問の回答をひたすら覚えました。
外したら全滅覚悟の作戦ですが、すべてカバーする手間に対して配点も低いし、ちょっとでも捻られたら恐らく答えられないので過去問で解けるところは確実に取る作戦です。
第3問施工管理の勉強法
第3問は解き方さえ理解できれば対応できる問題なのでクリティカルパスとトータルフロートの概念を理解した程度です。
それ以上は出たとこ勝負の作戦です。
本当はバーチャートも念のため押さえておきたかったのですが、結局やっていません。
第4問躯体工事の勉強法
第4問は前提知識があり、理解や覚える手間が少ないので過去10年分くらいの過去問は記述も選択も全て覚えました。
他の分野に比べて過去問以外が出ても対応しやすい分野ですが、効率的に勉強する方法は特にないので結局過去問対策のみです。
第5問仕上げ工事の勉強法
第5問は私にとっては知識もなく、難易度が高いので過去問以外は捨てるつもりで受験年に予想された記述の過去問は回答を全て覚えました。
第6問法規
第6問も私にとってはなじみがなく難易度が高いので過去問を覚える作戦で挑みました。
出る条文には偏りがあるのと覚える手間が少ないので10年分くらいは全て覚えました。
本番で同じ文章でも違うところを問題にされるということは十分予想でき、意識はしていましたが、本番ではその甲斐なく間違えました。
法規は唯一と言っていいほど効率的に全範囲の勉強が可能です。
極論を言えば出そうな条文を暗記すれば良いからです。
効率的ではありますが現実的ではありませんし、他の問題に比べて効率が良いだけで配点も低いですし、個人的にはそこまでやらなくて良いと思います。
勉強法の総括
長くなりましたが以上が各設問ごとの戦略と勉強法になります。
お気づきだと思いますが、基本的には過去問をベースにして丸暗記です。
唯一経験記述だけは事前回答の準備が必要ですが、基本的な戦略は受験年に出そうなテーマの過去問の回答を丸暗記です。
現場経験豊富な方は現場管理の知識があるので新しい問題が出ても第3問以外はその場で回答できることもあると思いますが、私はこの問題の中では躯体工事であればその場で回答できるかもしれない、程度なので丸暗記しかとれる対策がなかったという感じです。
肝は十分な経験記述を準備できるか、という点と過去問の回答をきっちり覚えきれるかという2点だと思います。
過去問は10年分ほど、4年周期の問題は3回分、工程管理はネットワーク工程表の過去問全てを目標にしていました。
当日の心構え
過去問を完全に覚えられたからと言って一言一句同じ問題は0ではないですがほとんどありません。
一捻りしたり新しい問題が当然出ます。
合格点は60%なので基本的に新しい問題は知ってたらラッキー、勘が当たればラッキー、できなくて当たり前で良いと思います。
過去問で解ける範囲がきっちり解ければ合格点が取れる構成になっています。
唯一気を付けなければいけないのが第1問です。
新テーマが出る、という可能性は非常に低いと思いますが、傾向として設問の聞き方を変えてきたり、条件を付けてきたりすることが良くあります。
回答のコアは準備したものを使いつつ、設問に合わせた文章にすることがとても大切です。
また、時事問題っぽい時代に合わせた新しい設問が追加されることがありますが、そんな時はみんな困っています。
とにかく何か書きましょう。
特に自分の考えを書かせるような問題は基本的には明確に間違い、とは出来ないはずなので当たり障りのない文章を書いておけば何点かはもらえるはずです。
まとめ
1級建築施工管理技士の対策は受験年に出そうな過去問の回答丸暗記と経験記述の事前準備に集約されます。
もちろん出るはずだった問題が出ない事もあるので合格の確率を上げるためには幅広く対策をするしかありませんが、そうなると労力が数倍になります。
まずは受験年にでそうな問題を完璧にしてから余力で広げていくのが良いと思います。
自分の得意分野不得意分野をしっかり分析して合格への戦略を考えてやり抜きましょう。
特に工事監理者の立場で受験する方の役に立てればとても嬉しいです。
コメント