今回の記事は鉄骨小梁の設計について書きたいと思います。
色々な部材がある中で基本中の基本ですが、原点に立ち返る意味でも再確認してみましょう。
全く初めてという方にはとても有用だと思いますので一読してみてください。
そしてぜひ自分でも計算してみてください。
小梁の拘束条件
ついつい忘れてしまいがちなのが拘束条件です。
小梁であれば端部の条件はピン接合になることがほとんどです。
小梁断面の形状はほぼ全てH形鋼になります。
また支持するものは床や屋根といった面材になります。
そこで計算上非常に重要になるのが上フランジの拘束条件です。
小梁の応力状態は両端ピン接合であるため単純支持状態で両端の曲げモーメントが0で中央が最大応力になり、下端引張かつ上端圧縮状態になります。
ここで重要になるのが曲げ許容応力度の低減です。
過去に鉄骨の許容応力度について記事を書いているのでそちらも参考にしてください。
圧縮力が作用するのは上フランジなので上フランジが拘束されていれば曲げ許容応力度の低減は必要ありません。
小梁がRC床を支持していてかつ小梁と床がスタッドで緊結されていれば上フランジは拘束されていると考えて良く、曲げ許容応力度の低減は必要ありません。
折版屋根等小梁を拘束できないような材料を支持している場合は上フランジが拘束されているとみなせないので曲げ許容応力度を低減させる必要があります。
こういった理由から小梁の拘束条件は非常に重要なのでまず一番に確認することをお勧めします。
ここを間違えると部材断面を2段階くらい間違えてしまいますので間違えたときのリスクが大きいです。
荷重とスパンの確認
拘束条件を確認できたら次は荷重とスパンを確認していきます。
小梁の場合は地震力を考慮しないので荷重とスパンの組み合わせで部材が決定します。
単位面積当たりの荷重と負担幅、スパンを確認してください。
また、計算結果を確認する時でも同じ建物の中で荷重とスパンが同じなのに部材断面が違ったりすると間違えているのではないかとチェックすることもできます。
経験を積んでくると計算しなくてもおおよその断面が予想できるようにもなります。
建物の規模にもよりますが全ての部材断面の計算内容まで確認することは実際不可能なので図面を見ておかしいところに気づく能力は非常に役立ちます。
計算する前にどれくらいの断面になりそうか予想を立ててから計算してみるとこういった力も鍛えられます。
少し話はそれましたが、荷重とスパンを確認出来たら実際に応力と変形を出してみてください。
計算できたら次は実際に断面を決めていきます。
断面を決める
小梁で考慮する応力は曲げ応力とせん断力になります。
せん断力でNGになることはほとんどないので中央の最大曲げ応力度で断面を決めます。
鉄骨造の場合はRC造に比べて変形が大きいので変形角が1/250を超えていないかまた、絶対値でも20㎜を超えていないか確認します。
変形角の1/250をクリアしていてもスパンが大きいと絶対値は大きくなります。
小梁の変形も馬鹿にできなくて、天井内で配管やダクト、天井がミリ単位で納まっていることも少なくないので変形が50㎜とかになってしまうと支障が出ます。
そういったケースでは応力ではなく変形で断面を決定します。
鉄骨造では常に変形を気にする必要があります。
特に経験が浅いうちはとにかく応力に目が行きがちですが、変形もセットで確認します。
私も過去に何度も指摘されました。
上記のような理由もあり、小梁の材料はSS400を使う場合が多いです。
材料強度を上げても変形は変わらないので結局変形で断面を落としきれなくなるので標準的なSS400を使います。
事務所やホテル、住宅等では他にも床全体の振動にも配慮します。
特にスパンが飛んでいるところは揺れやすくなるので稀に床振動性状で断面を決めることもあります。
これは踏み込むともっと深い話になっていくので言及するにとどめておきます。
小梁が支持するのはほとんどの場合が自重だけなので極力長期の曲げ応力に有利な断面にして経済性を上げていきます。
ウェブを薄くして梁成を大きくしていきます。
標準で用意されているJISの断面があるのでそれでまかなえる範囲はJIS材を使いますが、それを超えてくるような箇所は極力薄っぺらくて細長い断面を採用します。
小梁は極端に言えば条件さえ同じであれば誰が計算しても同じ結果になります。
どんどん自分の予測の精度を上げていってください!
屋根小梁
屋根小梁が特殊なのは曲げ許容応力度の低減がある場合があることと風荷重、雪荷重を考えなくてはいけないことです。
屋根がRC床の場合はよほど風が強い地域か豪雪地域でなければ長期荷重で部材断面は決まります。
難しいのは折版などの軽い屋根の場合です。
この時は長期荷重で部材断面が決まることはありません。
雪は最小でも30cmなのでこの時点で長期荷重より積雪荷重の方が条件が厳しくなります。
また風荷重は屋根の場所によって荷重が異なります。
建物の外周部分で強くなり、一般部分の2倍くらいの荷重になってしまいます。
なので荷重に合わせて外周は1本小梁を多めに入れたり断面を上げたりします。
断面を選ぶ時も今度は曲げ許容応力度の低減を考えなくてはいけないのでウェブが薄い断面を選ぶとかなり不利になります。
どの断面が最も経済的かという観点で見れば答えは一つなのですがパターンが増えるので難易度は上がります。
一番難しいのはどうやって小梁を架けるか計画することです。
これは経験が必要になります。
こういったところでコンピューターの力を借りて新しい答えを出してみたいものです。
RC床以外の面材を支持する小梁は難易度が上がるので注意が必要です!
まとめ
今回は鉄骨小梁の設計について書きました。
もっと踏み込めば外装受けや座屈止め、設備架台や点検歩廊等特殊な条件はたくさんありますが、今回は最も基本的な床を受ける小梁に特化して書きました。
まずはここから始めて設計スキルをアップさせていってください!
自分で手を動かすところから始めましょう!
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